イギリスの芸術支援団体から学ぶ、民間の芸術支援の可能性
- kainuma chisato
- 2024年8月31日
- 読了時間: 2分

Art Fund_ annual reports 2023/2024
イギリスの芸術支援団体Art Fundは、民間の力を活用して、社会課題と連携しながら芸術文化を支援している、注目すべき芸術支援のモデルの一つである。本記事では、2023年度のアニュアルレポートを参照し、Art Fundの取り組みの特徴とその意義についてまとめていく。
そもそもArt Fundは、主に4つの収入源から成り立っている。
1つ目は、メンバーシッププログラムによる収入である。「ナショナル・アート・パス」などのメンバーシッププログラムは、2023年には、135,000人のメンバーからの支援を得ている。メンバーになると、美術館やギャラリーへの入場割引や特典を得られる仕組みになっている。2つ目は、 個人や企業、財団からの寄付である。3つ目は、イギリス国内外の財団からの助成金である。4つ目は、遺贈であり、これは遺言を通して故人が遺贈することを指定する場合もある。
このようにして集めた収入を、芸術作品の購入や美術館の活動支援などに当てている。
たとえば、2023年はイギリス全土の美術館やギャラリーに対して総額8.4百万ポンドを助成し、そのうち4.5百万ポンドが新しい作品の購入支援に充てられた。また、約900点の芸術作品がパブリックコレクションに追加された。他にも、芸術を通して生物多様性の問題に取り組むプロジェクトを530以上の芸術機関と連携して実施し、これには10万人の子供や若者が参加した。さらに、多様性の推進にも力を入れており、女性現代アーティストの作品購入を支援するプロジェクトも実施している。
このように、Art Fundは、単に芸術支援をすることのみならず、社会課題と芸術を結びつける取り組みをしている点に特異性があると言えるだろう。また、地域の美術館・ギャラリーとの連携や若者などへの教育にも力点を置いている点に独自性が見られる。
文化庁を中心に、国や地方自治体による公的な助成が主流である日本では、公的資金が芸術文化の基盤を支えている。そのため、日本は国家の主導で芸術政策を展開していることから、芸術活動が安定した公的資金によって支えられる一方で、民間からの支援は比較的少ないのが現状である。
Art Fundのように、民間からの支援の充実を図り、芸術と社会的課題との連携を強めたり、助成を通して芸術界の多様性を推進させていくことが、日本の芸術政策においても有効であるのではないだろうか。




コメント