レンブラントハイス美術館の営業開発部マネージャーに聞く美術館開発とお金の話
- 貝谷 若菜
- 2023年5月30日
- 読了時間: 7分
対談ゲスト:Anneliese Kronenberg (Development Manager at Rembrandthuis Museum)
リノベーションを終え2023年3月に再び開館した、レンブラントハイス美術館(博物館)について、4月の「オランダで美術館に集う日本人ビジネスパーソン」の記事で紹介しました。
今回は日本からの観光客にも人気のレンブラントハイス美術館がリノベーションや展示、宣伝を行う上でどのようにスポンサー企業・個人を見つけ、ファンドを見つけ、営業活動を行っているのか、美術館における営業開発について伺いました。
待ち合わせ場所であるデン・ハーグのマウリッツハイスのカフェは平日、金曜日の14時にもかかわらず大変賑わっていました。仕事の合間の休憩かと思うような正装をした人も多かったです。

マウリッツハイスのカフェ(貝谷撮影)

マウリッツハイスのカフェ(貝谷撮影)
時間になりAnneliese (アンネリース)さんが到着し、簡単な挨拶をすると、「今日はオランダの博物館での資金調達やマーケティングについて聞きたいとのことですね。知ってることならなんでも話すので質問してください。」と言ってくださったので1時間半近く質問をしました。そのうちいくつかの質問と回答を以下に一問一答形式でまとめています。
【貝谷】レンブラントハイス美術館の収入について、ウェブサイトには上がっていないようですが実際はどのような内訳なのですか?
【Annelieseさん】ざっと、70%が入場券、スペースの貸し出しとショップの合計が5%、政府からの交付金が20%、ファンドライズによるものが10%という感じです。
【貝谷】オランダの美術館のファンドライザーは実際に何をしているのですか?
【Annelieseさん】
まずファンドライジングというと、民間と公共の大きく2つの方法があります。
これはオランダに限らずと思いますが、民間からの資金集めでは多くの場合、ウェブサイトから基金にフォームを提出したり、電話をかけたりします。富裕層の方々が免税対象となる文化投資の一環としてや、また単に美術館のファンであることから寄付をしてくれることも少なくありません。
一方、公共基金の場合は、政府が定めたカテゴリーと基準に沿って資金集めをします。例えば、文化活動の分野だと、音楽、デザイン、ダンス、視覚芸術などがあり、その中でもリノベーションなどの建物への資金、企画展示への資金、教育、サステイナビリティなどとカテゴライズがなされています。
ちなみに、レンブラントハイス美術館ではリノベーションが2023年の3月に終わったので今は、サステイナビリティに関するプロジェクトがすでに進行中ですよ。その他の有名な公共基金の例だとMondriaan Fundなどがありますよね。これも同じようにオンラインで申請をします。
【貝谷】すでに基金やスポンサーがいると比較的スムーズな資金集めの過程になるかと思いますが、その他、スポンサー・資金集めのための美術館の営業活動(セールスやマーケティング)にはどのようなものがあるのですか?
【Annelieseさん】
能動的な資金集めの活動としては、ネットワーキングイベントへの参加・運営や長期的なスポンサーとなる(可能性のある)企業とのコミュニケーションが中心ですね。
スポンサーとしてふさわしい企業に私から連絡をとって、美術館に招待し、プレゼンテーションをしたり、それによる企業側にとってのリターンについて話したりもします。と言っても、実際は企業側が美術館にアプローチしてくることの方が多いのですが。。その場合も相手の要望を聞いて、パートナーごとにパッケージをアレンジしたり調整したりするので、美術館側はフレキシブルであることがとても重要ですね。
例えば日本からのレンブラントハイス美術館のスポンサーの具体例をあげると、キッコーマンが長年支援をしてくれています。キッコーマンは20年前にEU内の主要工場をオランダに建た後、すぐに日本と関連した歴史をもつオランダの文化施設を支援したいと連絡をくれました。そして、20年間にも及ぶレンブラントハイスとの関係に非常に満足してくれているようです。
マーケティングに関していえば、レンブラントハイス美術館は一般向けのマーケティング活動のみ行っています。企業スポンサーには、私から直接電話してアプローチしたり、既存のネットワークを通じて話がきたりします。なので、美術館に務める個人のネットワークは非常に大切ですよ。どこの誰がスポンサーになってくれるかわかりませんからね。
来週もスポンサーになる可能性のある個人が美術館を訪れますが、これは美術館の従業員の個人的なネットワークから生まれた機会です。
【貝谷】スポンサーになる可能性のある企業に自らアプローチをするとのことでしたが、その際の評価基準やレンブラント・ブランドにふさわしいかなどの見極め基準などは、組織またはAnnelieseさん個人としてあるのですか?
【Annelieseさん】
そのような基準は特にないですよ。これはフィーリングです。
この分野で長年勤めてきていますから。
その観点からも美術館内での役割分担は重要ですよね。
私は資金集めや営業開発を担当していますが、スポンサー向けのイベントを企画するプロや館内ショップ・カフェを担当する職員もいますから。
カフェが集客に貢献していることは今周りを見渡しても一目瞭然ですし(マウリッツハイスのカフェを見渡しながら)、カフェは街にとっても素敵ですよね。
【貝谷】メンバーシップ・フレンドシップも美術館が能動的に収入をえるために行える活動のひとつかと思いますが、どのような戦略や思考があるのですか?
【Annelieseさん】
レンブラントハイス美術館は特に目新しいことも複雑なこともしてないですよ?なんといってもオランダにある他の主要美術館(マウリッツハイスやオランダ国立博物館など)に比べると規模の小さい博物館なので、活動の規模や種類も必然的に少なくなりますね。でも、今回のリノベーションとリニューアルオープンに合わせて新しいメンバーシッププランを導入しましたよ。今までは「フレンズ」という年間75ユーロ(約1万千円)のプランがあり、主な特典は、無制限の無料入場とフレンズ会員のために企画されたイベントに年に2回無料で参加できるというものでした。
イベントというのはオンラインでのレクチャーやアムステルダムの街散策ツアーなどです。会員は徐々に増えつつありますが、現在は大体200人程度です。そして今回新しく始めたのが「レンブラントのルームメイト」というプランです。こっちは年間に1000ユーロ(約15万円)以上の寄付者向けで、美術館のリニューアルオープン後から現在で約35人が登録してくれています。この特典の一番の魅力は、館内で作品に囲まれて食事ができるディナーへの招待券です。これもオランダの主要美術館では見慣れたイベントですが、やはり特別感を感じることのできる人気のイベントです。アムステルダム国立美術館(RIjks Museum)などに比べてレンブラントハイス美術館はスペースが限られているので少し大変ですけどね。
【貝谷】企業にとってレンブラントハイスのスポンサーをすることの最も大きなメリットはなんなのでしょうか?
【Annelieseさん】
もちろん、企業も個人のスポンサーにも言えることですが、美術館の支援活動の動機は「その美術館が好きだから」、「もっと楽しみたいから」といった純なもので、見返りを求めてスポンサーに応募してくる企業は少ないです。とはいえ、メリットとしては間違いなく”レンブラント”というブランドでしょうね。
〈一部省略&質問終了〉
【Annelieseさん】日本には数年以内にレンブラントの巡回展でも行きますし、今日はお話しできてよかったです。それにしても、日本の美術館が改革を起こそうとしているタイミングで活動に関われるのはとても面白いことですよね。日本の芸術にはブランド性もありますし、特に海外ウケがいいですから、ポテンシャルは十分だと思うので、オランダの事例から学べることがあるといいですね。もし、マウリッツハイスや他の博物館の資金集めについても聞きたければ連絡してくださいね。同業者は繋がっているので、ご紹介できますよ。
その後、2人で席を立つとハーグまで来てくれたお礼にとドリンクをご馳走していただきました。




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